カテゴリ:凍てついた船【退治屋】( 29 )

 

凍てついた船【退治屋稼業】表紙

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挿絵:杏仁とうふ様
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  by bluecastle2 | 2006-02-06 06:41 | 凍てついた船【退治屋】

凍てついた船【退治屋稼業】目次

※完結しました。もしよろしければ、感想コメントなどよろしくお願いします。
次回作を作ろうと思う気持ちの糧になります(笑)。

投稿時間の設定機能で記事の順序を調節しましたので、
「次のページ >」のリンクを押すと
そのまま次の話が読めるようになっています。ご利用くださませ。
全部読むのにかかる時間は、45分前後だと思います。
(自分で読み直してテストしました、約30分でした)

第1話:明るい未来に向かって
第2話:墜落、そして…
第3話:墜落の謎
第4話:ひとつだけ
第5話:薄暗い街
第6話:再会
第7話:永い眠り
第8話:あてどない旅に
第9話:夢と現実
第10話:特別な女性
第11話:少女の視た夢
第12話:やる気3割増し
第13話:あーちゃん
第14話:もう一仕事
第15話:6時間
第16話:カイザーの頭ン中
第17話:散らかった室内
第18話:低ランク
第19話:井の中の蛙大海を知らず
第20話:一応の解決
第21話:人間になりたぁい
エピローグ1:明るい未来は遠い
エピローグ2:動き出した時間

凍てついた船 番外編(06.5.11.)

あとがき
余談・制作裏話
あとがき2(修正後)
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  by bluecastle2 | 2006-02-06 06:40 | 凍てついた船【退治屋】

第1話:明るい未来に向かって

 どこまでも続く星の海の中を、
退治屋カイザー達は愛船おっとっと号で渡っていた。
赤い船体がキュートなこの船のことを彼らは“きんぎょ”と呼んでいる。
目的地はC.U.A.星系にあるリブフリー本社。
今度こそ、最低ランクの「グリーンマスター」を脱却するためだ。

カイザー達は実力だけなら、そこら辺のブロンズマスターにも劣らない。
なのに未だにグリーンマスターなのは、
彼らが…主にカイザーが金を使いすぎるせいで、
ランクアップのための審査代500万TNを
リブフリー社に納められないでいるせいである。

だが今回は違う。
死ぬ思いで仲間のフェイス、ミーナが努力をし
500万TNを貯めることに成功した。
明るい未来はすぐそこに見えているように思えた…。


 突然、船体が大きく揺れた。
「なんだ!?」
操縦はOSのあーちゃんに任せ、
自室でエロ本をむさぼり読んでいたカイザーは
慌てて操縦室に入る。
『緊急事態発生だじょ!飛行の続行は不可能だよーん』
ふざけた口調でそう知らせるのが、
おっとっと号のOS、あーちゃんである。
「何が緊急事態だ!燃料はこないだちゃんと積んだろう!?」
カイザーは怒鳴る。
『燃料の問題じゃないよーん。異常な引力に船が引っ張られてるんだじょ』
「はぁ!?」
聞いているうちにおっとっと号の疑似重力機能がいかれ、
船内は無重力状態となった。
カイザーは天井に思い切り頭をぶつける。
「イテッ!」
「あはははー、カイザー、何やってるにゃ?」
操縦室にミーナが入ってきた。
彼女は無重力状態などどうってことないという感じだ。
「うるせぇ!で、俺達はどーなるんだ!?」
ミーナに一言文句を言ってから、あーちゃんに訊く。
『墜落だじょー!!』
「えええええええええ!!」
ふたりは思わず叫んだ。
「…嫌な予感がするな」
いつの間にやら操縦室に来ていたフェイスが落ち着いた口調で呟く。
「最低だぁあぁぁぁぁァ!」

カイザーの叫び声も虚しく、おっとっと号は真っ白い星に墜落した。
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  by bluecastle2 | 2006-02-06 06:08 | 凍てついた船【退治屋】

第2話:墜落、そして…

 …静かだ。
信じられないほど静かで薄暗い場所に、カイザーは横たわっている。
冷えた金属の壁、金属の床。
ほどなくしてカイザーは目覚めた。
「……っ、くそ…」
彼はやたら痛む額を抑えながら身体を起こした。
「ここはどこだ?」
あたりを見回してみるが、おっとっと号や仲間達の姿はない。
あるのは、無機質な鉄板の壁と見たこともないような機材と、
戦死者の棺桶のように並んでいる大きな箱の群れ。
実際、箱は棺桶にも見えた。数は、とてもじゃないが数えきれる気になれない。
小さな窓からは眠っている人の顔が見える。
「…寒っ…」
カイザーは呟いた。
気温…否、室温がやたら低い。
ふと上を見上げる。驚いたことに、天井が無い。
自分の上には、星空が広がっていた。
「……随分凝った作りだな」
見えているのが本物の星空であるはずがない。
本来見えるべきものは、穴か何かのはずだ。
ここが室内で、近くにおっとっと号がないということは
墜落する間に自分は放り出され、
どこかの穴からこの部屋に侵入したことになる。
…身体で壁を突き破った可能性もあるが、
自分の身体に怪我はないので違うだろう。…頭はぶつけたらしいが。
「…考えててもしょうがねぇか…」
カイザーは頭を掻いた。

 「とりあえずきんぎょだな…」
おっとっと号には既に仲間がいるかも知れない。
いなかったとしても、わけのわからない場所に落ちた以上
フェイスやミーナも宇宙船を探すはずだ。

カイザーは無数の箱に背を向け、歩き出した。
その先は廊下のように長く続いている。
「…それにしても寒い…」
両手をこすりながら、白い息を吐く。
コツコツコツと、自分の靴音の反響だけが聞こえる。
その音に他人の物が混じるようになるのに時間はかからなかった。
「フェイスだな?」
顔がにやける。
相手の足音には聞き覚えがある、間違いなく彼だ。
「カイザー!」
お互い姿が見える程度に近づいたとき、
フェイスが声を上げた。
ふたりは駆け寄る。
「フェイス!やっぱり無事だったんだな」
「…うむ。よくわからんが、怪我はない。
妙だな。宇宙船ごと墜落したというのに無傷というのも」
「ああ…」
カイザーは頷く。
「ここは星ではないようだな。…宇宙ステーションか?」
「あーちゃんの奴、異常な引力がどうとか言ってたな。
しかし落ちる前にここをちらっと見たけどよ、
真っ白い星だと思ったぜ。基地にしちゃデカすぎないか?」
「うむ…」
フェイスは口元に手を当て、複雑そうな顔をしていた。
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  by bluecastle2 | 2006-02-06 06:07 | 凍てついた船【退治屋】

第3話:墜落の謎

「…ミーナは?みかけなかったか?」
カイザーが訊いた。
「いや…注意深く歩いてきたが見かけなかった」
「そっか。じゃあ…きんぎょは?」
「半壊だ。俺は宇宙船のすぐ傍に倒れていた」
フェイスは淡々と答える。
「なんだ、きんぎょから離れて歩いてきたのか、お前」
カイザーは不思議そうな顔をして尋ねる。
「あーちゃんに電波を発信するよう指示した。
ミーナは気づくだろうがお前は気づかないと思ったから探しに来た」
「んだよ、それ」
それではまるで自分が迷子になった子供のようだ。
カイザーは舌打ちした。
「…ま、いいや。…どのくらい壊れてるのか気になる。
きんぎょを見に行こう」
半壊ということは、修理しないとここを脱出できない。
困ったものだ。
カイザーはフェイスが来た方に歩き出す。
「…人っ子ひとりいないここで、
どうやって宇宙船を修理するか…だな」
フェイスが呟いた。
「人ならいたぜ?みんな、よく寝てるみたいだけどな」
「何?」
カイザーは自分の来た方をちょいちょいと親指で指す。
「あっちに、な。たぶん、コールドスリープだろ。
にしたってここは寒すぎるけどな。薄暗いし」
どこまで行っても明るい光はない。
無数の箱のエリアを抜け、廊下に出ても
非常灯のような、淡いオレンジのランプが点々と続いているだけだった。
「…人は、いるのか…」
「起こすか?」
「……それはよく考えてから決めるべきだろう」
眠っている人々が何者なのかもわからないのに、
迂闊に手を出すわけにもいかない。

 話しているうちに、壊れて煙を噴いているおっとっと号まで辿り着いた。
途中、いくつかドアや廊下の分岐があったが
フェイスは道を間違いなく覚えていたらしい。
ここも、相変わらず薄暗い。
船の窓越しに、中のコンピュータのモニタがちらついているのが見えた。
運良く特に何もない広間のエリアに突っ込んだようで、
コックピット側は原形を留めていた。カイザーは船に駆け寄った。
「うわー、こりゃひでぇ」
エンジンは大破している。素人が修理するのは不可能だろう。
燃料に引火して爆発しなかったのが唯一の救いか。
「宇宙船は壊れたのに、俺達が無傷なのはどういうことだと思う?」
フェイスが訊く。
「知るかよ。そんなことより、これを修理して
こんな気味悪いステーションさっさと出て行きたいぜ。
おい、あーちゃん!」
乱暴な口調でカイザーはあーちゃんを呼ぶ。
『カイザーひどい!あーちゃんは全力を尽くして船を守ったんだじょ!』
「の、わりには滅茶苦茶じゃねーか」
『操縦室は無事だじょ』
「エンジンが大破してんじゃ意味ねーよ!」
『あーちゃんも無事だじょ』
「嬉しくねーよ!」
カイザーはこめかみに青筋を立ててあーちゃんを言い争っている。
「カイザー。大人げないぞ」
呆れた声でフェイスが仲裁に入った。
「あーくそ。どーすりゃいいんだよ…」
カイザーは頭を抱える。
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  by bluecastle2 | 2006-02-06 06:06 | 凍てついた船【退治屋】

第4話:ひとつだけ

「ここが何なのかはわからないが、
科学技術のレベルはそれなりに高いと見える。
何か無いか探しに行くのはどうだ?」
途方に暮れているカイザーに、フェイスが提案した。
「そだな。じゃあこの辺に張り紙でもしとくか」
ふたりが無事だったのだ、ミーナも恐らく心配ない。
ならば、一度ここにふたりが来た旨を記した手紙でも残していけば
時間を無駄にせずに済む。
『伝言ならあーちゃんにまかせるんだじょ』
「お前はいらんこと言うから張り紙でいい」
『ひっどーい!』
カイザーは船の中から適当な紙を捜し出してきて、
汚い字で手紙を書き、扉に貼り付けた。

「行くか」
カイザーは銃を確かめると、歩き出す。
フェイスも彼の背に続いた。

「しかし、慣れねぇなぁ。天井が無い廊下ってのは」
カイザーは上を見ながら言う。
「窓ではないらしいな。もし窓の類なら
俺達はこのステーションに重大な穴を開けてしまったことになる」
フェイスの言うようにここに穴を開けてしまっていたとしたら
貴重な酸素が失われてしまうので笑い事ではない。
「じゃあシールドか…?」
カイザーは銃を上に向けた。
「やめておけ、弾を無駄遣いしてどうする」
それをフェイスが止める。
「いや、もしシールドなら脱出するときどうやって破るもんかなと…」
「今確かめる必要はないだろう」
「はいはい、わかりましたよ」
カイザーは口をへの字にして、銃をしまった。

 歩いていると、カイザーが最初に気がついた場所に来る。
「ここは…」
「みんなの寝室」
カイザーが半ばふざけて言った。
「本当に眠っているようだな」
小さな窓から見える顔を見ながらフェイスはひとり頷いている。
「死んでないと思うぜ、多分」
「何者なんだろうな…」
フェイスは箱の間を注意深く歩き回る。
カイザーはため息をついてから、ふと横を見た。
「おい、フェイス」
「どうした?」
「……開いてるハコがあるぜ」
それを聞き、フェイスはすぐに戻ってくる。
箱の群れでただひとつだけ、フタが開いているものがあった。
「どういうことだ?」
「さあな。敵じゃないことを祈るしかないだろ」
「…………」
考えていても仕方がないので、ふたりはまた先に進む。
ほんの少しだけ、警戒心を強めて。
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  by bluecastle2 | 2006-02-06 06:05 | 凍てついた船【退治屋】

第5話:薄暗い街

 カイザーが最初に落ちた部屋から宇宙船までは
わりと入り組んだ道が続いていたが、逆はそうでもなかった。
ただひたすらに続く冷たい廊下の終着点は、大きな部屋の入り口だった。
「うわ…っ!」
相変わらず室内はうっすらと暗いが、そこが何なのかはすぐにわかる。
どこの明かりも点いていないが、まるで飲食街のようだ。
食べ物らしき物の絵が描いてあるプレートやらのぼりがある。
無数のテーブルも見える。
「……なんなんだ、ここは」
「…さぁ…?」
フェイスの疑問にカイザーが答えられるはずもない。
本当にわからないのだから。
宇宙開拓の為のステーションならこんな楽しげな装飾は要らない。
なによりこんなにたくさんのテーブルを置く必要がない。
星間旅行の為の宇宙船ならこんなに馬鹿でかいはずがない。
人口爆発の問題を改善するための居住区としての施設なら、
近くに科学技術の発展した星があるはずだがこの辺りにそんな星はない。
だがどう見ても“ここ”は居住区のように思えた。
「これは、まるで…」

「居住区のよう…ですか?」
聞いたことのない声が、カイザーの独り言に応える。
「誰だ!」
カイザーは銃を構え、フェイスは剣に手を掛けた。
前方からやってきた白衣の青年はそんなふたりの様子に一瞬驚いたが、
大きく息を吸うと丁寧に頭を下げる。
「はじめまして。僕はシャルトと申します」
相手に殺気が無いのを見て、フェイスは剣から手を離した。
「…俺はフェイスだ」
「……退治屋、カイザー」
カイザーは相手の真面目そうな雰囲気が気に入らない様子だが、
とりあえず名乗る。銃を向けるのはやめたが、手は離さなかった。
「退治屋……?それは何なのですか?」
シャルトは不思議そうな顔で尋ねる。
「あぁ?馬鹿にしてんのか?」
「…カイザー、よせ」
今の世で退治屋という職業を知らない者はいないだろう。
「すみません。僕も昨日目覚めたばかりで…」
「コールドスリープからか?あちらの部屋に、開いているハコがあったが」
「はい。私が眠っていたものです」
彼はフェイスの問いにあっさりと答えた。
「はぁー…やっぱりか」
カイザーはがっくりと肩を落とす。
もしも彼がカイザー達と同じように、ここに墜落してきた人間なら
そちらの宇宙船を修理して脱出するという手もあった。
しかし淡い期待だったようだ。
「……?申し訳ありません」
シャルトは意味も分からず謝った。
「…いい、いいって。俺が悪かった」
「……?」
カイザーは首を掻きながら機嫌が悪そうな顔をしている。
この、やたら一途で真面目そうなのが苦手らしい。
「女の子を見なかったか?俺達の仲間なのだが」
フェイスが訊く。
「女の子?」
「ああ、ニャニャの少女だ。ミーナという。
ここに墜落したときにはぐれてしまった」
放っておいてもおっとっと号に戻ってくるだろうが、
訊いてみる価値はある。
「ニャニャ星人!?あの、超能力が使えることで有名な!」
シャルトは声を弾ませる。
「……ただのデカイ猫手、猫足、羽根付き女だよ」
カイザーが呟いた。
「僕、ニャニャ星人には会ったことがないんです。うわぁ、会ってみたいなぁ!」
「………その様子じゃ、見かけなかったんだな」
「…あっ、ええ。すみません」
フェイスに言われて、シャルトは落ち着きを取り戻した。
「無闇に謝るな、身体が痒い」
「………?」
カイザーの言った意味が、シャルトにはよくわからなかった。
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  by bluecastle2 | 2006-02-06 06:04 | 凍てついた船【退治屋】

第6話:再会

「俺達はさっきここに墜落したんだ。知ってたか?」
カイザーが訊いた。
「大きな音がしたのは知っていました。だから、少し歩き回っていたんです」
 シャルトは“ここ”の者。ならばこの謎の施設の正体も知っているはず。
カイザーは続けて問う。
「“ここ”はなんなんだ?まるで時間が止まってるみたいだ。
研究のためのステーションには見えないし、星間旅行の為の船でもない。
人口問題を解決するための居住区なら、こんなに静かなはずがない」
明かりは全て落ちている。人々は冷たい眠りについている。
一体、それは何のために?彼らにはわからないかった。
「いいえ、船です。逃げるための」
シャルトは低い声で呟いた。
「………え?」

「カイザー!フェイスー!」
その時ミーナの元気な声がした。
「ミーナ!」
「ふたりとも無事で良かったニャ。あーちゃんの電波を感じたけど、
もっと強い電波に妨害されてて道がわかんなかったんだニャ!」
彼女は猫足をぺたぺた言わせながら駆け寄ってきた。
「わぁぁ~、羽根だ!猫手だ!わぁ~」
シャルトは自己紹介も忘れてミーナの手や羽根を触ったりする。
先程とは大違いだ。
「……誰?」
「あ、す、すみません。私はシャルトと言う研究者です」
「けっ、研究者!?」
それを聞いて、ミーナは咄嗟に彼の手を振り払った。
「……ミーナ…さん?」
ミーナは少し怯えたような目で彼を見る。
無理もない、ニャニャ星が滅んだ今、生き残りは酷い目に遭っている場合も多い。
その希少価値故に売買されたり、
その不思議な能力故に研究対象にされてしまったり。
「ミーナ、大丈夫だ。彼はそういう者ではない…多分」
フェイスが言った。
「そ、そうだよね。何考えてるんだろ私…。
カイザーとフェイスが一緒に居るんだから、心配なんかいらないのに」
「ていうかその子供みてぇな無邪気な顔見て怯えるなよ。
どう見たってアホじゃねーか」
カイザーが付け足す。
「よろしく、ミーナさん」
「よろしくニャ」
ミーナとシャルトは、軽く手を握り合った。
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  by bluecastle2 | 2006-02-06 06:03 | 凍てついた船【退治屋】

第7話:永い眠り

「きんぎょ…俺達の宇宙船を修理したいんだが。
墜落した衝撃で半壊してるんだ」
しばらくしてから、カイザーが言う。
とにかく宇宙船が直せなければここから出られない。
「宇宙船の修理ですか……。
どんな宇宙船か存じませんが、
この船にはそんなに物資がないんですよ…。大丈夫かなぁ」
シャルトは少し困った顔をした。
「それでも俺達はさっさとここから出て行きたいんだよ」
「ううん……」
カイザーは少し苛立っている。仲間は揃った。
確かにここはなぞめいていて、ちょっと気になるが、
用事がないなら自分には関係のないこと。
その時ミーナがため息をついた。
「カイザー、慌てることないニャ。
私はここが何なのかの方がよっぽど気になるニャ」
「俺も気になるな」
フェイスがミーナに同意する。
「あー、わかったよ」
カイザーは肩を落とした。
自分の仲間は何故こんなに呑気なのだろう。
彼らの呑気さに習って、カイザーも気になることをひとつ言うことにした。
「ここはやたら寒い。そこのニャニャが羽織れるモンはねぇか?」
彼はミーナの薄着に気を遣いながら言った。
「ええと……倉庫は遠いし…じゃあ、とりあえずこれを」
シャルトは白衣を脱ぎ、ミーナに渡そうとする。
「待った!!」
「な、何ですかカイザーさん」
「そんな薄いモンじゃ足しにならねーよ!
しょうがない、俺のを貸してやる!」
カイザーは半ば強引にシャルトを止め、
自分の上着を脱いでミーナに渡した。
「ほら、着ろ」
「別に寒くないけどにゃあ…」
「いいから!」
「要らないニャ!」
突然、ふたりの口論が始まる。
「…??」
羽織る者を寄越せと言っておきながら断り、
仕舞いには言い争いになる理由が分からず、シャルトは首を傾げた。
「…放っておいてやれ、いつもああなんだ」
首を傾げるシャルトにフェイスが言った。
「そうなんですか?」

 無駄な口論に疲れたふたりは、その場に座り込む。
ミーナはあたりを一度見回してから、こう訊いた。
「シャルト、ここは何なのニャ?変な電波飛んでるし…」
訊かれて、シャルトの視線は床に向く。
先程、ミーナと合流する直前彼は確かに言いかけていた。
“逃げるための船だ”…と。
「その……信じて貰えるかはわかりませんが
僕は300年以上眠っていたんです。
どうして今更目が覚めたのか、わかりませんが」
「300年!?完っ璧なコールドスリープ技術が完成したのは100年前なのに?
ていうかなんでそれがわかるんだ!?」
カイザーは目を丸くした。
「時間は、この船のメインコンピュータの時計が狂っていなければの話で…。
電波については私もわかりません。
それから技術ですが……ええと、その」
シャルトは言いづらそうな顔をしている。
「…………」
そのまま、言葉は途切れてしまった。
「…“逃げるための船”、“永い眠り”……。
そうか、お前はあの伝説の星の者なんだな」
フェイスが言った。
「!」
カイザーとシャルト、ふたりの表情が同時に変わる。
「あれはただの噂だろ!?」
「……いいえカイザーさん。フェイスさんのおっしゃる通りです。
私は…いえ我々は、星系間移動が盛んになり始めた頃、
既に高い科学技術を持っていた“スイーズ星”の人間なんです」
シャルトはフェイスの目を見る。
「…そういうことか…」
「そういうことなんです」
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  by bluecastle2 | 2006-02-06 06:02 | 凍てついた船【退治屋】

第8話:あてどない旅に

「ちょっと…待つニャ!訳わかんないニャ!
私にもわかるような説明を求めるニャ!」
ミーナはおたおたしながら言った。
「この浅学ニャニャっ娘が」
カイザーが呟く。
「…説明してやれ、カイザー。
お前が話すことでシャルトも眠る前と今の違いを理解できるだろう」
フェイスが促す。
「…ったく。いいか、一遍しか言わねーぞ。
スイーズ星っつうのは宇宙の三大勢力…C.U.A.、Earth、EUが
こぞって欲した技術の星だ。
その豊かな資源と高い技術力により、
高度な文明を持ってるって噂がこの宇宙中を流れたらしい。
まだまだ発展途上だった俺らのご先祖様は
その星を夢の星って呼んで探し回ったんだ。
けど、それらしき星はとうとう見つからなかった。
だけどンなモン見つけなくても、
俺達はこんなに技術を発展させられたんだぜ、凄いだろ!
…っていう………そんな、おとぎ話だ」
カイザーは大袈裟に手を開いたり、肩をすくめたりしながら語った。
…意外に似合っていた。
それを聞き、シャルトは話しにくそうにもぞもぞするのをやめる。
この人達に黙っていても意味はないだろう…そう感じたから。
「広い宇宙が自分の星を狙っていると知ったとき
我々研究者は恐ろしくなりました。
相手は我々の技術を奪うために何をするかわからない。
逃げるしか無いと思いました。
我々は力を合わせてこの巨大な宇宙船を作り、
積めるだけの物資を積んでから星の海に逃げ出しました。
そして、母なる…母なる自分たちの星を自分たちの手で破壊して、
長い浮浪生活を送ることになったのです。…行くあてもなく…ね」
シャルトは遠い目をしている。
もう存在しない、故郷の星を想っているのだろうか。
「随分ぶっ飛んだ考え方だな。どっかと手を組んで身を守るとか、
そういうことは考えなかったのか?」
カイザーは腕を組んだ。
「3つの勢力が一斉に狙ってきていたのですよ。
例えどこかと手を組んでも、研究者の奪い合いが始まれば
研究者でもない人間にまで被害が及んでしまう」
「じゃあいっそ、進んだ科学技術を駆使して敵勢力みっつ全部をぶっ潰すとかは?」
「そんな…私達の技術は人殺しのためにあるのではありません」
シャルトは呆れてため息をついてしまった。
「それで…逃げ出すことにしたのか。進んだ技術は全て封印して。
だからここの人間は皆、眠っているんだな?」
フェイスが言う。
「それは…少し違います。この船は元々培養室を備えていますから
食料は自給自足できます。最初は…みんなここで普通に暮らしていました」
そういうことなら、このやたら楽しげな飲食街の存在も納得できる。
暮らす場所が“星”から“船”に変わっただけで、
一般人は今まで通り過ごしていたのだろう。
「…食べ物に困らなくても、燃料には困ると思うけどにゃあ…」
ミーナがため息混じりに言った。
宇宙を飛び回る退治屋は、皆燃料の補給問題に頭を悩ませている。
用もないのに燃料補給のためだけに近くの星に下りることもしばしばだ。
「燃料は……こちらに来てください」
シャルトは歩き出す。
カイザー達はついていくしかなかった。
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  by bluecastle2 | 2006-02-06 06:01 | 凍てついた船【退治屋】

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