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第1話:明るい未来に向かって

 どこまでも続く星の海の中を、
退治屋カイザー達は愛船おっとっと号で渡っていた。
赤い船体がキュートなこの船のことを彼らは“きんぎょ”と呼んでいる。
目的地はC.U.A.星系にあるリブフリー本社。
今度こそ、最低ランクの「グリーンマスター」を脱却するためだ。

カイザー達は実力だけなら、そこら辺のブロンズマスターにも劣らない。
なのに未だにグリーンマスターなのは、
彼らが…主にカイザーが金を使いすぎるせいで、
ランクアップのための審査代500万TNを
リブフリー社に納められないでいるせいである。

だが今回は違う。
死ぬ思いで仲間のフェイス、ミーナが努力をし
500万TNを貯めることに成功した。
明るい未来はすぐそこに見えているように思えた…。


 突然、船体が大きく揺れた。
「なんだ!?」
操縦はOSのあーちゃんに任せ、
自室でエロ本をむさぼり読んでいたカイザーは
慌てて操縦室に入る。
『緊急事態発生だじょ!飛行の続行は不可能だよーん』
ふざけた口調でそう知らせるのが、
おっとっと号のOS、あーちゃんである。
「何が緊急事態だ!燃料はこないだちゃんと積んだろう!?」
カイザーは怒鳴る。
『燃料の問題じゃないよーん。異常な引力に船が引っ張られてるんだじょ』
「はぁ!?」
聞いているうちにおっとっと号の疑似重力機能がいかれ、
船内は無重力状態となった。
カイザーは天井に思い切り頭をぶつける。
「イテッ!」
「あはははー、カイザー、何やってるにゃ?」
操縦室にミーナが入ってきた。
彼女は無重力状態などどうってことないという感じだ。
「うるせぇ!で、俺達はどーなるんだ!?」
ミーナに一言文句を言ってから、あーちゃんに訊く。
『墜落だじょー!!』
「えええええええええ!!」
ふたりは思わず叫んだ。
「…嫌な予感がするな」
いつの間にやら操縦室に来ていたフェイスが落ち着いた口調で呟く。
「最低だぁあぁぁぁぁァ!」

カイザーの叫び声も虚しく、おっとっと号は真っ白い星に墜落した。

  by bluecastle2 | 2006-02-06 06:08 | 凍てついた船【退治屋】

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