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第12話:やる気3割増し

「さて、まずは美女の解放だな」
カイザーはサラの首を繋いでいる機械のコードの束を軽く握った。
「!?」
「シャルト。あんたはどれをどう繋げばいいかわかるな?」
彼はコードを今にも引っこ抜いてしまいたいという顔をしている。
「て、手順があります。乱暴に扱わないでください!」
「じゃあお前が抜け」
「な、何をするつもりです!?」
シャルトは本気で焦っていた。対するカイザーは余裕の表情。
「もちろん俺に繋ぐ。機械を正常に動かすには
フルチャージのバッテリーを使うのが一番だからな。
あ、ミーナ。おっとっと号に戻ってあーちゃんに指示してこい。
道はシャルトとかフェイスが知ってるから一遍で覚えろよ。
まずはこのコンピュータをあーちゃんで乗っ取って“蟲”を探す」
「はーい」
ミーナは明るい声で返事をすると、
フェイスに道筋を聞いた後元気よく駆けていった。
「危険です!」
シャルトの言葉を無視してカイザーは部屋の中を歩き回る。
「カイザー、何を探してるんだ?」
フェイスが訊いた。
「んー、保険。要らなさそうなコンピュータは無いかなって。
あー、これ、使ってなさそうだな」
カイザーは電源の入っていないパソコンを一台、勝手に起動した。
型は少し違うが自分たちにもなじみのあるものだ。
これが遙か昔に作られた物だと思うと、今更ながらに感心してしまう。
「それからフェイス、お前も保険だからな」
「!」
「俺に何かあったら、お前が代われよ」
カイザーは白い歯を見せて笑う。
「カイザー、そんな心配するなら最初から俺が…」
フェイスは歩き回るカイザーの後ろについて回る。
「だーめ、美女を救う勇者は俺に決まってンの」
「…………」
フェイスは呆れた顔で、微笑んだ。
こういうことを言い出したカイザーは、もう絶対に止められない。

「何を言っているのですか!このシステムはサラ以外の人では動かせません。
それだけではなく、精神力が足りなければ死…」
「だからここにでっかい保険がいるだろう?
俺で無理ならこいつがやる。それだけのこった」
カイザーはフェイスを親指で指す。
「保険って…!」
シャルトは簡単に言う彼らの考えていることが本気でわからなかった。
助けが欲しくないわけではないが、彼らが無償で手を貸してくれる理由は全くない。
その上、失敗すれば死ぬと言っているのに気にも留めていない。
「シャルト、この方々の言うとおりにしてください。
私には…もう力がありません。それに…」
サラは部屋を歩き回って何か考えているカイザーを見てから、こう付け足す。
「きっと彼は、私達よりずっと賢い」
「スイーズ星の科学技術の第一人者が何を…!」
「…すぐにわかります」
シャルトはサラとカイザーの顔を交互に見る。
「カイザー殿、よろしくお願いします」
サラはニッコリ笑って、頼んだ。
「まかせとけ!その笑顔でやる気3割増しだぜ」

  by bluecastle2 | 2006-02-06 05:57 | 凍てついた船【退治屋】

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